再⽣因⼦注⼊療法

コラム

変形性膝関節症の治療 ~手術編~

変形性膝関節症で変形してしまった関節は、元には戻りません。薬物療法や装具、減量などを行っても、痛みが取れず症状が進行してしまった場合には、手術を検討します。

手術にもいくつか方法がありますが、ここでは骨切り術と人工膝関節置換術について紹介していきます。どの手術にもメリットやデメリット、合併症などのリスクが伴います。手術方法についての理解も必要ですが、手術をした後に気を付けなければならないこと、手術後の生活について知ることはとても重要です。

それぞれの手術の特徴と注意点を中心に説明をしていきますので、参考にしてみてください。

手術を受けるタイミング

痛みが強く、変形や可動域制限が大きくなり、日常生活に支障を来たしている状況であれば、手術を考慮した方が良さそうです。「変形性膝関節症の手術を考える時」のコラムも

ありますので、参考にしてみてください。

【参考】

変形性膝関節症の手術を考える時 | 再生因子注入療法/PRP療法を発展させた再生医療 (my-cell.jp)

骨切り術と人工関節置換術の特徴

骨切り術は、変形性膝関節症が進行する前に、特に衝撃の加わるスポーツをする方を中心に行われている手術方法です。脚のゆがみを直して重心を調整するので、痛みが軽減し、膝の曲がりは術前以上に保たれますが、もともとあった軟骨の摩耗が治るわけではありません。

人工関節置換術が必要になるまでの時間を伸ばすための手術といえます。

人工関節置換術は、部分的あるいはすべての膝関節を人工関節に置換する手術方法です。

部分置換術では、手術後の状態が医師の技量によるところが大きく、将来的に全置換が必要になる場合も考えられます。 自分の関節も残っているので、全置換にくらべ違和感が少なく、可動域制限がかかりづらいと言えます。全置換術では、正座や負荷の大きいスポーツはできなくなりますが、20年程度の耐久性があるので、変形性膝関節症の最後の砦になります。

骨切り術の経過

正式には、高位脛骨骨切り術と呼ばれます。日本整形外科学会で推奨されている治療法として、「内側の変形性膝関節症による症状が著しい若年患者では、高位脛骨骨切り術の施行により関節置換術の適応を約10年遅らせることができる場合がある.」とされています。

この手術は、出っ張った骨を整えてから、脛の骨に人工骨を挿入します。最近使われている人工骨は、3〜5年で吸収されるものが使用されています。固定用のチタンプレートとボルトは約1年後に取り出す必要がありますが、手術翌日には歩けて、翌々日には退院となる比較的軽い手術です。

手術後、痛みはありますが、翌日には曲げることができ、入院期間の目安は2〜3週間。歩いて退院できます。骨がくっつき痛みが取れる約3か月後には普通の生活に戻れます。自分の膝関節が温存できるということが、この手術のメリットです。

【参考】

高位脛骨骨切り術について教えてください:現場レポート|骨と関節が痛い方をサポートするWebサイト|関節ライフ (kansetsu-life.com)

人工膝関節置換術の経過

人工膝関節置換術には、人工膝関節全置換術(TKA)と、人工膝関節部分置換術があります。

部分置換術は、単顆置換術(UKA)と膝蓋大腿関節置換術(PFA)に分類されますが、ここでは単顆置換術のみを取り上げます。

<人工膝関節全置換術>

全置換術は、軟骨や骨の摩耗が高度かつ十字靭帯も傷んでいる方が対象で、ひどいO脚やX脚も直すことができます。手術は、大腿骨と脛骨を削って面取りをし、人工関節を設置します。耐久年数に優れているところがメリットですが、可動制限があり、正座はできません。

痛みが取れても、膝の違和感が残るというのがデメリットであると言えます。20年程度の耐久性があると言われていますが、交換が必要になるので、年齢を考慮して手術を考える必要があります。

入院期間は片膝で2〜3週間、両膝で3〜4週間が目安です。手術翌日よりリハビリテーションが始まります。術後に通院が必要です。階段の昇降や人込みがリスクになるので、電車通勤や立ち仕事、力仕事への復帰は3ヶ月ほどかかります。スポーツも3ヶ月位を目途に始めることができますが、硬い地面で転倒すると骨折の可能性があるため注意が必要です。

【参考】

人工膝関節手術|東京女子医科大学整形外科 (twmu.ac.jp)

人工膝関節置換術のスケジュール――入院から退院後の生活まで | メディカルノート (medicalnote.jp)

<単顆置換術>

単顆置換術は、内側もしくは外側のみに病変がある方が対象となります。健常部分を温存して、傷んだ部分のみを人工関節に置き換えます。全置換術に比べて、身体への侵襲や違和感が少ないですが、耐用年数が短く、悪化すれば追加の手術が必要になる可能性があります。

また、医師側の経験と技術が必要になるので、この手術を受けられる病院は限定されます。

<人工膝関節置換術で注意すること>

人工膝関節置換術の合併症として、1.感染  2.人工関節のゆるみ・破損 3.血栓症・塞栓症が挙げられます。

1.感染

手術の際に患部に細菌が入って感染が起こることもありますが、風邪や虫歯、尿路感染症などの膝とは直接関係がない感染症が原因となることがあります。人工膝関節に感染が起これば、人工関節の交換が必要になる場合があります。

2.人工関節のゆるみ・破損

人工膝関節の再置換の要因は、人工関節のゆるみです。また、人工膝関節が擦り減ってできる細かい粉が、身体の排除しようとする働きにより、周囲の骨を溶かしてしまい、それが

ゆるみにつながることもあります。強い衝撃で、破損する可能性もあります。

3.血栓症・塞栓症

手術中または手術後の安静による血流低下によって、血栓ができ、塞栓症の原因になることがあります。太もも、ふくらはぎ、膝裏、足首に腫れや痛みが現れます。

【参考】

人工膝関節置換術のスケジュール――入院から退院後の生活まで | メディカルノート (medicalnote.jp)

変形性膝関節症の治療――薬物療法、手術 | メディカルノート (medicalnote.jp)

合併症について|人工ひざ関節について|人工関節ドットコム (jinko-kansetsu.com)

まとめ

変形性膝関節症に対して手術をすることで、日常生活の維持や、やりたいスポーツなどの継続が可能となります。膝や全身状態を評価し、適切な手術を受けられるよう、早い段階から

 整形外科を受診し、手術になる前に必要な治療を受けましょう。手術後も、肥満を予防したり筋力をつけたりして、膝を保護するような生活が大切です。糖尿病や喫煙、虫歯や尿路感染症など、手術のリスクになるものがあります。適切な時期に適切な治療が受けられるよう、日ごろからの健康管理にも気を配りましょう。

【参考一覧】

「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる (joa.or.jp)

人工膝関節手術|東京女子医科大学整形外科 (twmu.ac.jp)

人工膝関節置換術のスケジュール――入院から退院後の生活まで | メディカルノート (medicalnote.jp)

変形性膝関節症|慶應義塾大学病院 KOMPAS (keio.ac.jp)

koa.pdf (jcoa.gr.jp)

変形性膝関節症の治療――薬物療法、手術 | メディカルノート (medicalnote.jp)

日本整形学会で推奨されている変形性膝関節症の治療法 (ooco.jp)

高位脛骨骨切り術について教えてください:現場レポート|骨と関節が痛い方をサポートするWebサイト|関節ライフ (kansetsu-life.com)