再⽣因⼦注⼊療法

コラム

変形性膝関節症の治療 ~バイオセラピー編~

変形性膝関節症の治療に選択肢が広がっています。保存的治療が限界を迎えたら、その先には手術という選択肢しかありませんでした。そこにバイオセラピーという新しい治療法が加わりました。現時点では自由診療として行われていますが、2015年に厚生労働省が再生医療等安全性確保法を規定しています。手術を受ける前の一つの選択肢として検討する価値はありそうです。

バイオセラピーの種類

バイオセラピーとは、自分の細胞を用いて、損傷を受けた組織の修復を促す再生医療です。

変形性膝関節症に対して行われているバイオセラピーとして、皮下脂肪を用いる方法と、血液を用いる方法をご紹介していきます。

皮下脂肪を用いるバイオセラピーには、脂肪に含まれる幹細胞の働きを利用して行われる治療で、培養した間葉系幹細胞を注入するASC療法と、間質血管細胞群を注入するSVF療法があります。幹細胞が持っている同じ細胞を複製したり他の細胞に変化したりできる能力を利用します。また、幹細胞はエクソソームという細胞伝達物質を分泌して、周りの組織の炎症を抑えたり、組織の修復を促したりする作用がある(パラクライン効果)とも考えられています。

血液を用いる方法としては、PRP療法、APS療法、PFC療法、GPS-Ⅲ療法などがあります。

自己の血液中に含まれる血小板の成長因子が組織の修復を促進する働きを利用し、患部の疼痛の軽減や傷んだ組織の修復を図ります。

PRP療法

バイオセラピーには複数の治療法があることをお伝えしましたが、代表的な治療法として、PRP療法について詳しく説明していきます。

PRP(多血小板血漿)療法は、特殊な技術を用いて、自己血から血小板が多く含まれる部分のみを抽出して自己PRPを作製します。これを身体の傷んだ部分に注射し、その部分の組織の修復を促し、疼痛の軽減を図ります。自己血を使うので、副作用を起こすことが滅多にないというのが特徴です。

変形性膝関節症に対して行われているPRP療法は、関節の炎症を抑制したり、擦り減った軟骨組織の修復を促したりする効果が期待できます。完全になくなってしまった軟骨を作ることはできませんが、変形の進行を抑制する効果があると考えられています。

スポーツ外傷や障害にも適応があり、治療期間の短縮や、難治性の障害に対し完治を目指して

PRP療法が行われています。

PRP療法は効果の現れ方に個人差があり、治療回数は様々です。変形性膝関節症の疼痛緩和目的の治療であれば、2~3回行い、半年ほど経過をみて、痛みなどの再発があれば再度2~3回治療を行うといった流れになります。現在では保険が適用されず自由診療となっていますので、治療費は病院によって大きく異なります。

まとめ

バイオセラピーは、手術療法のハードルが高いと感じる方への選択肢となりますが、自由診療であるため、費用面も考慮して治療の選択をする必要があります。

近年では、PRP療法が進化し、次世代PRPと呼ばれるAPS(自己たんぱく質溶液)療法が行われるようになってきています。APSは、PRPをさらに遠心分離・特殊加工することで、炎症を抑えるたんぱく質と、軟骨を守る成長因子を高濃度に抽出したもので、関節痛や炎症の軽減、軟骨の変性や破壊の抑制が期待され、海外の治療報告では、1回の注射で最大約24か月間改善効果が持続するとの報告がされています。

進化する再生医療。自由診療という壁はありますが、治療の一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

参考:

【 NEW! 】変形性膝関節症に対するPRP療法|日本医科大学付属病院 (nms.ac.jp)

再生医療等の安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

PRP療法とは?整形外科におけるPRP療法の目的や効果について | メディカルノート (medicalnote.jp)

多血小板血漿(PRP)による治療について|順天堂医院 (juntendo.ac.jp)

APS療法(次世代PRP療法)のご案内|診療科のご案内|三郷中央総合病院 (mchp.jp)

関節の悩みに、入院のいらないバイオセラピーを | 関節治療オンライン (seikei-online.jp)

PRP/APS療法について|中国労災病院 (johas.go.jp)