変形性膝関節症の手術を考える時
加齢とともに増える変形性膝関節症。膝に負担をかけないような日常生活の工夫。鎮痛剤の服用や外用薬の使用、膝への注射などを行う薬物療法。サポーターや足底板などの装具の使用。筋力をつけて膝を保護し、可動域の制限などを改善するための運動療法。これらの保存的療法をずっと続けてきた。
ずっと続けてきたけれど、痛みは変わらない。逆にひどくなっている。変形がますます進み、正座ができない、好きなこともできない、歩けない。日常生活が、膝が原因でどんどん制限されていく。そんな兆候を感じてきたら、手術を考えた方が良いかもしれません。
手術を考えるタイミング
例えば、人工関節置換術を行った場合、だいたい15〜20年で置換のための再手術が必要とされています。手術後は正座や激しい運動ができなくなります。保存療法を半年以上続けても効果が見られない場合には、手術を視野に入れた治療法の検討が必要になってくるのは事実です。手術を受けるかどうかは、手術をした後の生活も考慮して決める必要がありそうです。
人工膝関節置換術を検討するタイミング |
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● 60歳以降で、変形性膝関節症がかなり進行している ● 運動療法・薬物療法などの「保存療法」を行っても、膝の強い痛みが改善しない ● 膝の痛みなどの症状がひどく、生活に不自由を感じている ● 膝の痛みなどにより、自分のやりたいこと(趣味など)ができない ● 自分の脚で歩けるようになり、活動的な日常を送れるようになりたい |
手術を受けるリスク
日常生活に支障を来たすような痛みや機能制限がある場合、手術を考えた方が良いというのは分かりました。では、手術を受ける際に考えなくてはいけないリスクについてお伝えしてきます。手術を受けるメリット・デメリットを把握した上で、自分に手術が必要なのかどうかを考えましょう。ここでは特に、高齢者が手術を受ける上で高まるリスクについて説明します。
・感染症:どの手術にも感染症のリスクは伴いますが、糖尿病や肥満でリスクが高まります。特に高齢者では、虫歯や水虫、尿路感染症、肺炎、皮膚の炎症などを持っている方が増えてきます。すると、その感染源から、膝へと感染をおこすリスクが高まります。リウマチなどでステロイド剤を服用していても、感染のリスクが高まると言われています。
・血栓症・肺塞栓症:手術後の安静時間が長くなる傾向に伴い、下肢の血栓形成の確率も上昇していきます。
・廃用症候群:これも安静時間が長引くことで引き起こされるリスクです。全身の機能が低下し、離床がさらに長引く可能性があります。
※廃用症候群とは:過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた様々な状態のことで、筋委縮や関節拘縮、見当識障害や褥瘡(床ずれ)などの多様な症状を生じている状態のこと
参照:廃用症候群 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
・人工関節のゆるみ:高齢者の場合は主に筋力低下により生じます。
・リハビリが可能か:手術前より日常生活に制限があれば、もともと筋力低下や拘縮が強いと考えられるため、術後のリハビリが可能であるかとの評価が必要です。
まとめ
手術を受けるかどうかの基準は、症状や痛みでどれだけ日常生活に制限を受けているのかというところが大きいようです。症状が進んでいても痛みを伴っていなければ手術を選択する
必要性は少ないですし、症状が進行していなくても、保存的治療をしても痛みで日常生活が送れないようであれば、手術を検討する必要があります。
手術法は1つではありません。それぞれの手術に適した時期や適応があります。手術をした方が良いと感じたら、主治医に相談してみましょう。
参考:
人工膝関節置換術を行うタイミングについて解説|つらい膝痛にお悩みの方へ | 関節治療オンライン (seikei-online.jp)
膝の痛みに効く薬の効果と副作用、変形性ひざ関節症の治療 | NHK健康チャンネル